※ ここに書いてある内容は小川の個人的見解であり、小川ゼミに関してのみ適用されます。学科内の他の先生方が同じ考えであるとは限らない点にご注意ください。
ゼミとは?
関西学院大学文学部総合心理科学科心理科学専修では3年次からゼミに分属されることになっていますが、分属手続きの始まる2年生の段階ではそもそも「ゼミって何?」という疑問を持つ人が多いのではないかと思います。
ゼミは履修科目としては「心理科学演習」という名前の週1コマの科目です。ただし、この科目は通常の講義科目のように、週1回教室に集まって講義を受けるということを意味するのではありません。みなさんはゼミに配属されてからの2年間をかけて自分の研究テーマを決定し、そのテーマに関する研究を進め、その集大成として卒業論文を提出することになります。ゼミとはこの2年間の活動すべてを指すと考えてください。ですから、週1回定められたゼミミーティングに参加することは当然ですが、それ以外の時間にも各種の課題や、自発的な先行研究の調査、実験の準備・実施などなど様々な活動を行ってもらう必要があります。
ゼミは大学4年間の学業生活の中でも非常に重要な意味を持っていると私は考えています。4年間の学びの集大成としての卒業論文研究を納得いくものにするために、どのゼミに分属するかについてよく考えて欲しいと思います。ここでは、これから小川ゼミに所属することを考えている人を対象に、小川ゼミの2年間で何をどのように学ぶことが出来るのかについて説明します。
小川ゼミのポリシー
私のゼミ担当教員としての教育目標は「ゼミに配属されてからの2年間で、少なくとも学会発表に値するオリジナルな研究を卒業論文研究として仕上げてもらう」ことです。この目標を達成するために、小川ゼミでは「先行研究の読み込み」と「個人面談」を重視しています。
先行研究の読み込み
卒業論文はこれまでの実験レポートなどとは違って、自分で研究目的を定めて、実験計画を立案し、データを収集・分析する必要があります。しかも、この研究目標は単なる思いつきではなく、これまでの先行研究の知見を十分踏まえ当該研究分野で今どういうことが問題になっているのか全体像をつかんだ上で、設定することが重要です。
そのため、小川ゼミでは先行研究(英語論文)の読み込みを重視しています。具体的には3年次の早い段階から最新の研究を扱った英語論文に取り組んでもらい、3年次の後半には複数の論文を自分なりにまとめて報告してもらいます。
英語に苦手意識を持っている人は不安になるかもしれませんが、研究論文の文章は「誰にでも内容をわかりやすく伝える」ことを目的に記述されているので、文法的にはそれほど難しいものはありません。最初は専門用語に戸惑うかも知れませんが、そこをクリアすればそんなに苦労することはないでしょう。これまで語学の授業などで文学作品の難解な英文に悩まされた人も、心配しなくて大丈夫です。
個人面談
卒論研究は学生が主体的に進めていくものですが、いきなり2年間の研究プロジェクトに取り組めと言われてもなかなか大変だと思います。そこで小川ゼミでは、最低月1回の面談を行うことによって、直接卒論研究に関する指導を行う機会を作るようにしています。これを一つのペースメーカとして利用してください。
面談では、そのときに読んでいる英語論文の内容や、関連する研究の検索、実験計画などについて指導・ディスカッションを行います。「次までに○○をやっておいてね」と宿題がでることもあります。時間のあるときには、お茶を飲みながら世間話をして終わることもあるかも知れません。
面談の日程や宿題の期限については、自分のスケジュールを考えて自主的に決めてもらうことにしています。私のスケジュールはカレンダーからチェックできるようにしていますので、ここから都合のいい時間帯を指定してもらえれば、随時面談可能です。
小川ゼミの研究テーマ
小川ゼミで行う卒論研究のテーマは、人間の知覚・認知・意志決定に関わるものであれば基本的には何でもかまいません(秋学期に行われるゼミの個別説明会ではこれまでの卒論研究で行った研究内容について具体的に説明する予定です)。但し、前述したように単なる思いつきでテーマを選ぶのではなく、全く同じテーマでなくても構わないのでなんらかの形で参考となる先行研究を見付け、それを基に研究計画を立てることを求めます。
方法論としては、反応時間や正答率を測定する心理物理学的手法を用いた実験だけでなく、眼球運動を指標として用いた実験を行うことが出来ます。片山ゼミの共同研究の形で、脳波などの生理指標を用いた実験を行うことも可能です。ただし、実験ではなく質問紙法による調査研究を行いたい人は他のゼミを選択してください。また、ラットなどの動物を使った研究を小川ゼミで行うことは出来ません。
実験機材としては、実験用LCDやHMDによる視覚刺激呈示用の実験環境( VIEWPixx, Oculus Riftなど)、眼球運動測定装置(Eyelink 1000 remote, Eyelink 2)などを備えています。その他、必要な機器があれば随時追加しています。
小川ゼミのスケジュール
上述したように、小川ゼミでは卒業論文を2年間を掛けて行う一つの研究プロジェクトであると考えています。 2年間のスケジュールは以下のようなものです。もちろん、これはあくまで代表的な例ですので、研究テーマによってはこれとは違うスケジュールを取ることもあります。
分属決定後
小川ゼミでは研究テーマは個人の興味に基づいて決定します。2年次12月のゼミ分属決定後に、ゼミでどのようなことが研究したいのかについての予備調査を行います。この時点では、テーマはそれほど焦点化されていなくてもかまいません(例:顔認知について・注意について・色の知覚について、等)。春休みの間に個人面談を行い、予備調査で挙げられたテーマの内容をもとに書籍や論文の紹介をします。テーマを決めるときには、推薦図書リストが役に立つかも知れません。
3年次
週1回のゼミでは、それぞれの研究テーマに関する発表を行ってもらいます。参加人数にもよりますが、各学期に2〜3回程度は発表することになります(必要に応じて補講を行います)。ゼミ発表終了後に面談を行い、その内容を次のゼミ発表に反映させる、というサイクルを繰り返す中で少しずつテーマを絞っていき、3年次の1年をかけて具体的な実験計画に落とし込んでいきます。
春学期の第1回目のゼミ発表は、春休みにまとめた自分の研究テーマの内容を紹介してもらいます。第2回目のゼミ発表は、自分の興味と近いレビュー論文を選択し、その研究分野で今何が問題になっているのかを捉えます。さらに第3回目のゼミ発表では実験論文を一つ取り上げてその内容を紹介することで、具体的な実験手法やデータ分析など具体的な研究方法について学びます。第4回目以降のゼミ発表では、関連する論文を自分で検索し、必要に応じて複数の論文を自分なりにレビューして紹介してもらうことになります。
夏休みの宿題として、春学期に学んだことに加え、新たに5篇程度の学術論文を読んでまとめてもらいます。その上で、自分なりの新しい実験計画を立案してもらい、資料にまとめたものを9月中旬頃に提出してもらうことにしています。
3年次の秋学期では、夏休みに立案した計画をたたき台としてゼミの中でディスカッションをおこない、実験計画を確定します。そして、PsychoPyなどを用いて実験プログラムを作成し、少なくとも予備的なデータを秋学期の間に収集し終えることを目指します。
4年次
4月前半に行われる「卒論研究計画発表会」で、3年次でまとめた実験計画および収集した予備的データの報告をしてもらいます。卒論の報告会は他にも8~9月に合宿形式で行われる「中間報告会」と、1月に行われる「最終報告会」があります。これらの報告会には他ゼミを含めた院生・研究員だけでなく、学外の研究者にも参加してもらっています。様々な観点をもつ人々から幅広い意見をもらうことによって、研究内容をよりよいものにすることが狙いです。
4年次のゼミでは、毎回全員に前回ゼミからの一週間でどの程度研究が進んだかについて進捗状況と、次の一週間でどのように研究を進めるのかについての計画を報告してもらいます。加えて、毎回2~3名に実験結果の報告や、関連する先行研究の文献報告を行ってもらいます。
その他のイベント
その他のイベントとしては各種懇親会(飲み会)として、新ゼミ生の歓迎会(4月)、春学期納会(7月)、忘年会(12月)、4年生追い出しコンパ(2〜3月)を予定しています。また卒論報告会の後にも有志で懇親会を行います。積極的に参加して、ゼミ生の親睦を深めてください。
他にも学生主体でイベントを企画することもあるようです。私も都合が合う限りできるだけ参加しています。ゼミでの勉強・研究は大変なことも多いですが、できるだけ楽しく取り組んでいくことも大事だと私は考えていますので、そのようなイベントを積極的に企画してくれればうれしいです。
最後に
ここまで書いたように小川ゼミに分属された皆さんは、3・4年生の2年間に渡ってそれなりのリソースの振り分けをゼミでの活動に対して求められることになります。その意味では「しんどい」ゼミだと言えるかも知れません。「3年生のうちはクラブやバイトに専念して、4年生になって就職活動が終わってから卒論に取りかかろう…」と考える人には向いてないと思います。
ただし、これを乗り切ることによって獲得できるであろう、大きなプロジェクトを立ち上げ、情報を収集し、行程を具体化したうえで、計画的に研究を遂行する能力は、この先の人生できっと役に立つはずと信じて、ゼミを運営しています。意欲的なみなさんと一緒に研究を進めていくことを楽しみにしています。